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SnowMAP トップスキーヤー試乗テスト2022 ~マスターズモデル編~

2022-10-22 (土) 18:50

毎年、多くのアマチュアレーサーがその結果に一喜一憂するマスターズレースのシーン。メーカー各社からラインナップされているマスターズモデルも、その性能はFISモデルと同等レベル。R30というレギュレーションにしばられることがないため、操作性、ターン性能といったところは各社のテクノロジーが色濃くあらわれ、それぞれの持ち味はFISモデルよりもバラエティに富んだジャンルと言ってもいいだろう。「SnowMAP」では全8メーカーから2022-23マスターズモデルを集結。日本を代表するトップスキーヤー3人による試乗テスト企画を行った。
2022年4月、長野県「野沢温泉スキー場」。コンディションは春雪。ハイシーズンのハードパックされた条件ではないが、むしろスキーの性能が如実に出るごまかしの効かないテストにはもってこいの状況ともいえる。今回テスターとして集まったのは岡田利修、河野恭介、そして今回のテストの数週間前に現役最後のレースを終えたばかりの湯浅直樹。いずれも日本を代表するトップスキーヤー。
今回の試乗テストはFISモデルというわけではないため、サイズ、ラディウスには若干のバラツキがあるが、世界のトップで厳しい戦いを経験してきた彼らが各社のマスターズモデルのポテンシャルを最大限に引き出し、それぞれのインプレションを紹介。その結果はいかに!?


ATOMIC「REDSTER G9 RS REVOSHOCK」
価格:¥135,000(税込)
サイズ(R):176(21)、183(24)
サイドカット:105-67.5-90(183cm)

ATOMIC「REDSTER G9 RS REVOSHOCK」
試乗サイズ:183cm
湯浅直樹
私が試乗した中で最も良い印象だった。どっしりとした安定性がありながら、よく曲がると感じました。私の経験上、どっしりとしたスキーは重たく感じ、曲がりづらいという印象がありましたが、よく曲がるせいか重さは感じられず、むしろ軽快にさえ感じたところはちょっと驚きました。「REVOSHOCK」が搭載されたスキーには初めて乗りました。その恩恵なのか、嫌な振動が極端に抑えられてバーン状況が良いと気持ちのいいターンが出来そうです。直線的なラインを意識しながらも急激な操作をせずにスキーを縦に動かしていけば特別なことをしなくてもタイムが出そうな感じがします。

河野恭介
ターン前半にはトップの柔らかさを感じるが、バタつくこともなくスムーズなターンの導入が可能なスキー。センターからテールにかけてはしっかりとしていて、直進性が高く、スムーズなターン始動と抜けの良さを両立したスキーに仕上がっているように感じた。低速域でもスキーが動いてくれる優しい印象で、高速域でも安定性、グリップの良さは高い次元でした。スタートからゴールまでフルカービングで攻めていきたいレーサーにおすすめしたいモデルです。


ELAN「GSX WC X PLATE」
価格:¥181,500(税込み)ER14FFビンディング ¥192,500(税込)ER17FF STビンディング
サイズ(R):185(25)、191(27)
サイドカット:非公表

ELAN「GSX WC X PLATE」
試乗サイズ:185cm(「ER17FF ST」ビンディング使用)
岡田利修
非常にしっかりとした印象。重厚感があり、個人的には非常に好みのスキーだと感じた。スキーが縦に走り、強いイメージで、よりスピードの次元が高いシチュエーションや、硬いバーンになったときには、その性能を遺憾なく発揮できるスキーだと思います。ある程度、筋力があり、高いレベルを目指したい方にはオススメのスキーです。

河野恭介
剛性が高く、しっかりとしていながら反応も速いスキー。HEADに比べるとキビキビと動くがFISCHERよりも重厚感があると感じました。完成度は非常に高いと思います。フレックス自体は硬く感じるので低速域や振り幅の大きいセットでスキーのたわみを出すにはある程度の技術と体力が必要になるが、高速域ではどのレベルのレーサーにも強い味方になると思います。


FISCHER「RC4 WORLDCUP GS MASTERS 」
価格:¥195,800(税込)
サイズ(R):183(23.4)、189(27.6)
サイドカット:非公表

FISCHER「RC4 WORLDCUP GS MASTERS」
試乗サイズ:183cm
岡田利修
まずスキーを装着した際の印象としては、どっしりしているという印象を受けました。滑走した際には、伸びがあるスキーだと感じました。体重をしっかり乗せて滑走することでフォールライン方向にスキーが推進していく印象です。板全体のバランスも非常に良く、ターン始動時の方向付けもしやすく、振り幅のあるポールセッティングにも対応しやすい印象を受けました。

河野恭介
非常にバランスのとれたスキーで、安定性と操作性ともに高いレベルにあった。FISCHER特有の綺麗にスキー全体がたわむフィーリングはマスターズのスキーにも継承されており、しなやかなターンを作ることができた。どのレベルのスキーヤーがどんな条件で乗っても滑りやすいバランスのとれたスキーだと思います。


HEAD「WORLDCUP REBELS E-GS RD」
価格:¥188,100(税込)
サイズ(R):176(23)、181(25)、186(25)、188(27.5)
サイドカット:104-65-87(186cm)

HEAD「WORLDCUP REBELS E-GS RD」
試乗サイズ:186cm
河野恭介
圧倒的な安定感があると同時に、角付け角度にあったたわみしか生じないハードなスキー。スキーにしっかり荷重ができて、かつ傾きを作ることができればしっかり曲がるが、適切な働きかけができなければ曲がってくれない。今回のテストは緩斜面だったため、雪面に張り付く感じと直進性がタイムにつながるスキーだと感じたが、乗りこなすには一定の技術が必要ではないかと思います。

湯浅直樹
まるでサーフィンの様に雪面を舞うことができるスキーという印象を受けました。雪面にスキーが食い込んでいくことを嫌うスキーヤーにはこのスキーがオススメです。エッジを立てたら立てただけ雪面をグイグイと曲がっていくのですが、その際にスキーが雪面に刺さっていく様な動きが他のスキーよりも無く、普通に滑るだけでも雪面抵抗が少なくスルスルと滑れると感じるので不思議な感覚になりました。緩斜面でスピードが無い状態からターンを作っていくのが苦手な私にはとてもありがたいモデルだと感じました。


ROSSIGNOL「HERO MASTER LT」
価格:¥176,000(税込)
サイズ(R):169(15)、173(17)、179(19)、183(21)
サイドカット:115-71-96(183cm)

ROSSIGNOL「HERO MASTER LT」
試乗サイズ:183cm
河野恭介
印象的だったのはトップの太さ。引っかかるのではないかというイメージを持ってしまったが、実際乗ってみるとフレックスとトーションのバランスが良く、太いトップによる素早い前半の捉えと操作性を両立していた。フルカービングでどんな難しいセットでも攻めていけるようなスキーだと感じた。緩斜面や簡単なコースでタイムを出すためには一定の角づけコントロール技術が求められる。

湯浅直樹
軽快なスキーという印象を受けました。スキーが直線的に動き、どんどん前へ進んでくれるのでラインどりさえ見誤らなければ、とても良いタイムが期待できそうなスキーだと思いました。安定性も高く、スキーのヒールの方がよく効いて後半にグンとひと押ししてくれる印象です。スキーが前へ前へと進んでくれるので強引なラインどりをせずに比較的丁寧なラインどりで滑れば良いタイムにつながると思いました。


SALOMON「S/RACE PRIME GS」
価格:¥176,000~181,500(税込)
サイズ(R):176(21)、183(24)
サイドカット:105-68-89(183cm)

SALOMON「S/RACE PRIME GS」
試乗サイズ:183cm
岡田利修
全体的に非常にスムーズな印象。グリップが強いというよりは操作性が高いイメージ。トップが内側に入ってくるよりも必要以上にエッジが食いつきすぎることがなく、雪面抵抗を減らすことでタイムに繋がりそうな印象を受けた。少し、余裕を持ったラインどりでスキーを滑らせていくことができればタイムが期待できるスキーだと感じました。

河野恭介
オートマチックに前半に足場をセットできるスキーで、丸いターン弧というよりも縦にスキーを使っていくような滑りがしやすいスキーだと感じた。前半のとらえが良く、多少、体を内側に預けてもトップが入ってきてくれるため、ダイナミックな滑りが可能になると思う。スキーの反応が速いため、ターン前半の間の取り方、リズムの取りかたは他スキーと異なっていて、思い切って動いていきたい、縦に攻めていきたいといったアグレッシブなレーサーにオススメのスキー。


STÖCKLI「LASER GS」
価格:¥225,500(税込)
サイズ(R):175(17.1)、180(18.2)、185(19.4)
サイドカット:118-68-97(180cm)

STÖCKLI「LASER GS」
試乗サイズ:180cm
岡田利修
サイドカーブが他と比べてきつかったこともあり、非常に曲がりやすい印象を受けた。しかしながら、ターン中の安定感、浮遊感などはFISのスペックを継承していることが感じられる。マルコ・オーデルマットに代表されるような柔らかいエッジングが可能となるラインナップ全体の統一感もうかがえるスキーだと感じました。

湯浅直樹
雪面を確実に、安定的に切って滑るならこのスキーだなと感じました。強烈に印象的な挙動が無いのが逆に良いなとも感じました。スキー自体が非常に落ち着いているので、乗り手もそれに呼応するように落ち着いてターンをすることができたという印象です。安定性もターン性能も高い次元でまとめつつ、スキーが余計な動きをしないので滑りやライン取りに没頭できそうです。滑りの中にもエレガントさを求めるならこの1台かなと思いました。


VÖLKL「RACETIGER GS WC MASTERS」
価格:¥159,500(税込)
サイズ(R):174(≧21)、178(≧23)、183(≧25)、188(≧27)
サイドカット:102-64.5-86(183cm)

VÖLKL「RACETIGER GS WC MASTERS」
試乗サイズ:183cm
岡田利修
まずスキーを装着した印象として、非常に「軽い」と感じました。実際に滑走した感覚としては、ターン始動時のトップの反応が早く、カービング性能が非常に高い印象でラディウス以上に曲がりやすい印象を受けました。難しいセッティングや、スタート直後が急斜面のシチュエーション等では、その操作性の高さから性能を発揮するスキーという印象です。スタート直後のスピードがない中でリズムをつかむのが苦手な方にとっては、その欠点をスキーの性能で改善してくれる頼もしいスキーではないかと思います。

湯浅直樹
雪面状況をとても敏感に感じ取ることができ、乗り手が起こした微妙なアクションにも反応してくれるクイックなスキーという印象でした。ブーツをビンディングに押し込んだ瞬間から「おっ軽い!」と感じました。この軽さは春の水をたっぷりと含んだテスト当日のスノーコンディションでも苦に感じることがないほど軽快に滑ることができました。私の経験上、軽いスキーは高速域でバタつきやすいという印象がありましたが、このスキーはそのような動きが感じられず安定性も高いところが良いなと思いました。自分からガンガン動きを出していくタイプのスキーヤーにはお勧めです。

【試乗を終えての全体的な感想】
岡田利修

今回試乗したラディウスが18m~25mほどのスキーは、カービングが出来て当然という印象の中で、曲がりやすさを追求しているというよりも、タイムを出すためのノウハウをFISカテゴリーのスキーからしっかり落とし込み、滑走性が良く「速さ」を求めたスキーが多かったという印象です。また、スキー板トップからテールまでのフレックスとトーションのバランスが優れているため、滑走中に違和感がなく、全体的に雪面コンタクトがしやすくスムーズに動いてくれるスキーが多かった印象も受けました。スキーヤーの皆さんには、固定観念を持たずに、まずは試乗していただき、そのメーカーごとの特性を感じながら自分にマッチするスキーを選んでいただけたらと思います。

河野恭介
マスターズ用のスキーでもそれぞれのメーカーの特徴が見られ非常に楽しくテストをすることができました。WCシーンのテクノロジーを活かしたメーカー、マスターズ向けに別のアプローチをしているメーカー。それぞれに意図を感じ、得意な滑り、目指す滑りとフィットすれば大きくタイムアップに繋がるのではないでしょうか。ラディウス、長さ、プレートなどによっても違いがあるため、ぜひ、さまざまなメーカーをテストして、自分に合った一台を見つけて欲しいです。

湯浅直樹
たくさんのメーカーのスキーをテストする機会は初めての体験でした。レーサーとして「もっとこのスキーに合う滑りをしたい」と思いをかき立てられるほど、どのスキーも個性や主張がしっかりとしていて、私にとっては1日滑っても時間が足りないとさえ感じました。また、このカテゴリーのスキーを使用して滑るのも初めてだったのでとても良い勉強になりました。真っ直ぐ走るスキーやターン性能に重きを置いたスキーなど性能の違いがハッキリとしていて、選ぶ側も非常に選びやすいカテゴリーだなと感じました。私は自分から非常に強くスキーを踏んで曲げていくタイプのレーサーですが、どのスキーもパワー負けすることなくグイグイと反応し、押し返して来てくれました。どのスキーも非常に高い性能であると確認できたのも自分自身、勉強になりました。

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