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2021 FISアルペンスキー世界選手権 浦木健太ヘッドコーチ インタビュー

2021-03-01 (月) 16:37

コロナ禍で迎えた2020-21シーズンと世界選手権
ナショナルチームメンバーそれぞれの立ち位置とこれまでを振り返る

 日本以上に新型コロナウィルスの猛威にさらされたヨーロッパ。多くの国、街でロックダウンが発令されるなか、ワールドカップ、世界選手権は無観客ながらもこれまでなんとか開催されてきた。そのヨーロッパで長い遠征生活をおくる日本アルペンナショナルチーム。レーススケジュール、練習環境の確保など日々、変更を余儀なくされるなかでも結果を求められる厳しい環境に身を置く選手とチーム。その環境下で日本チームとしての舵取りを担う浦木健太ヘッドコーチに世界選手権の総括。そして今シーズンのチームとしての活動を訊いてみた。
 
SnowMAP-世界選手権を終えられて、日本チームとしてはまずまずのリザルトを残せた大会ではないかと。ヘッドコーチとしてどのような大会でしたか?
浦木健太HC-まず、チームパラレルという新しい種目への挑戦ということもあり、出場権を得た場合は必ず出場しようと大会前からできるだけ準備は進めていました。当然、結果というものは欲しかったのですが、初戦に優勝したノルウェーとの対戦でした。負けてはしまいましたが、加藤聖五(野沢温泉SC)はもう少しという滑りを見せてくれました。もちろん、スタートの難しさや、細かなコースをGSのスキーで滑るという点など、あの種目ならではのテクニックは必要になりますね。まずは経験したことで、これからの課題も明確になってきました。チームパラレルはいろいろな人におもしろいと言ってもらっています。この種目で結果が出てくると、アルペンスキーの認知度もさらに高くなっていく可能性のある種目だと思います。私個人としてはこの種目は強化していかないといけないと思っています。アルペンスキーというのは個人競技ですが、チームとして勝つということを意識することで、選手個人としても視野が広がっていくのではないという期待もあります。来年の北京オリンピックでもチームパラレルはありますから、狙っていきたいですね。

SnowMAP-女子のGSはどうでしたか?
浦木健太HC-女子のGSは2人(安藤麻、水谷美穂)ともDNFという結果でしたが、安藤は途中までいい滑りでしたね。今シーズンは年明け以降、SLに集中したいという意向からワールドカップでのGSはスキップすることになりました。そのような中でも途中まであれだけの滑りができたことで、まだまだGSでも勝負できるという感覚もつかめたのではないかなと思います。
水谷についてはまだ、結果を求めているわけではなかったので、思い切って行け!ということで送り出しました。世界のトップと同じ舞台に立って、いろいろなことを感じ取ってくれたと思います。

SnowMAP-男子GSはどうでしたか?
浦木健太HC-男子GSでの加藤は本人も言っていましたが、1本目はダメな滑りでした。2本目は吹っ切れていましたね。やはり技術ではなく気持ちの問題だと思います。気持ちの部分でしっかりとつくることができれば、あれだけの滑りができるということを本人も分かったと思います。2本目は9番タイムでしたからね。正直、コースは相当むずかしかったですよ。コースアウトする選手も多いなかでワールドカップ第1シードの選手たちに負けず、9番タイムでゴールしたことは自信にもなったと思います。これからのレースにつなげてほしいですね。

SnowMAP-女子SLはどうでしたか?
浦木健太HC-やはり、今大会の1番の結果は安藤麻(日清医療食品)のSL10位という結果だと思います。やはり、今シーズンここまでSLでいきたい!という思いを強く持っていたので、プレッシャーもかなり強かったと思います。1本目で8位という結果でした。ですが、20位くらいまでタイム差がつまっていたので、ちょっとしたミスでも一気に順位を落としてしまったでしょう。気持ちの面で強くもっていかないとトップ10は難しいと思っていました。それでもしっかりと自分の滑りをして、技術的な部分に加えてメンタルでの強さというところも見せてくれました。彼女はこれからワールドカップでも優勝というところを狙っていかないといけない立ち位置にいますので、我々もしっかりとサポートしていきたいと思います。

SnowMAP-男子SLはどうでしたか?
浦木健太HC-男子のSLについては小山陽平(日本体育大学)が今シーズン、年明け以降ワールドカップでも調子を取り戻していました。練習でもいい滑りを見せていました。そういったなかでの今大会でしたので期待もありました。ですが、スタートから自分の滑りができていなくて、途中のミスからは全然取り戻せなかったですね。正直、今回のコースセットやバーン状況も彼には合っていると思っていました。チャンスではないかと。世界大会という大きな舞台で、そのチャンスを活かせなかったのは、本人がいちばん悔しいでしょう。彼はそこまで悔しがったりする姿を表に出すタイプではないのですが、今回はかなり悔しそうにしていました。そういった気持ちは次にうまくつなげてほしいです。決して状態が悪いわけではないなかで結果がでないという状況が続いていますが、いつ結果として表れてもおかしくない状況です。SLはワールドカップ残り1戦ですので、そこに集中してほしいと思います。

SnowMAP-コロナ禍というなかで迎えた世界選手権ですが、チーム運営という面では大変な部分も多かったのではないでしょうか?
浦木健太HC-本当に大変ですね。世界選手権だけではないですが、例えば、国境を渡るたびにPCR検査が必要となります。また、練習環境も限られてきます。スキー場が開いているのかどうか。近隣のホテルが営業しているのかどうかなど、その都度チェックしなければいけません。
我々、日本チームのような海外から来たチームにとっては練習場所の確保などが大変となっています。そういった中で計画的にチームを動かしていくという点はかなり大変なシーズンとなっています。加えて、先の予定が立てづらいということもあります。そういったところで選手にもストレスをかけてしまっているところはあります。例えば1週間くらいのスケジュールを立てていても、レースの中止や順延なども普通に起こっているので、それをまたいちから組み立てなければいけないという繰り返しです。我々はヨーロッパの国々の人間ではないので。今シーズン、選手たちは長い遠征となっています。そういった状況下でもレースに出場できているという点では、多くの方々にさまざまな形でサポートしていただいています。感謝しかないですね。

SnowMAP-12月には新型コロナウィルスの感染もありました。どのような状況だったのでしょうか。
浦木健太HC-ほかの国の選手の感染という情報もありましたので、もちろん我々もできる限り気をつけてやってはいたのですけどね。隔離後のPCR検査もなかなか陰性にならず、小山選手はレースをキャンセルすることになりました。

SnowMAP-そのような大変なシーズンのなか、他の強豪国でも新しい選手の台頭というが見られますが?
-SLについては本当に僅差ですね。誰が勝っても驚かないという雰囲気です。小山選手にも充分チャンスのある状況です。フラッハウでは1.77秒差で2本目に残れませんでした。1.77秒差くらいでぎりぎり30番以内に入れれば、2本目の滑走順からも大いにチャンスのある状況だと思います。それでも小山選手と話しているのは31位というのは惜しくはない。ということです。秒差というのはだんだんと縮まっていますが、勝つというところから見れば、足りていないんですよね。勝つ実力をつけていけば、30番に残る、残れないという戦いではないレースができるわけで、30番に残るという意味では惜しいのかもしれませんが、勝つという意味では惜しいということではないですからね。

SnowMAP-来シーズンは北京オリンピックもあります。どのような強化、チーム運営をお考えですか?
浦木健太HC-もちろんオリンピックは大事です。ですが、あくまでナショナルチームとしては世界で勝つことが目標となります。ですので、ナショナルチームのメンバー、もちろん今シーズン、国内で活動する選手にはオリンピックの出場枠を獲るだけのためのシーズンにはしてほしくないですね。例えば全日本選手権で優勝することで、出場権を獲得できるかもしれませんが、全日本選手権で優勝するためのシーズンの過ごし方では世界では勝てませんからね。オリンピック出場もナショナルチームメンバーも手に入れることができる選手は少ないですが、チャンスは平等にあると思いますし、平等な選考であればと思います。
 
写真提供:浦木健太/日本アルペンナショナルチーム
  
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